東京高等裁判所 昭和50年(ツ)54号 判決
原判決は、被上告人の署名について成立に争いのない乙第一号証(昭和四三年一二月九日付、売渡契約書)には、本件土地のうち三反歩について、これを被上告人が上告人に明渡すことを約し、その条件として上告人は被上告人に二五万円を支払うこと、反当り四〇万円以上に売れた時には上告人が被上告人に差額を支払うことなど原判示のごとき記載があることを認定判示しながら、仮りに右書面によって、上告人と被上告人間に本件土地のうち三反歩について代物弁済契約が締結されたものと認めうるにしても、本件ではそもそも前記のとおり被上告人が上告人に対し金七五万円の支払義務を負担していたことを認めるに足りる証拠はないのであるから、上告人が本件土地のうち三反歩の条件付所有権(本件土地は農地であるから所有権移転のためには農地法第三条の許可を必要とする)を取得しえないことが明らかであると判断しているが、原判決事実摘示第二の三の3、4に記載されているとおり、上告人は原審において、被上告人が前に約定した期限の昭和四三年九月末日までに金七五万円の債務の支払いをしなかったため、同年一二月九日上告人と被上告人との間に、被上告人が本件土地のうち三反歩をもって上告人に代物弁済することを約して右債務を決済する約定が成立したことを主張しているところ、この主張は、上告人が抗弁として主張するところの全趣旨に徴すれば、右一二月九日の債務決済の約定は原判決事実摘示第二の三の2に記載されている九月一四日の話合いにおいて被上告人が上告人に対する前示金七五万円の債務を認めてこれを支払う旨の約定が成立したことをあくまで前提とし、もし右話合いの際にその約定が成立していなかったとすれば三反歩の代物弁済契約をするものではないというだけの主張と解すべきではなく、右一二月九日の約定に際し、あらためて被上告人が上告人に対する金七五万円の支払債務を認めたうえで、その債務の決済方法として三反歩の代物弁済を約定したことを主張する趣旨をも含むものと解する余地があり、右乙第一号証の記載内容によれば、この主張事実を認定しうる余地なしとしないから、原判決が九月一四日の時点で被上告人が上告人に対し金七五万円の支払義務を負担していた事実が認められないということだけで、本件代物弁済契約は債務が存在しないのになされたものであるから目的物の権利移転の効果を生じないと判断した点に、審理不尽、理由不備の違法があるものといわなければならない。
(畔上 安倍 唐松)